システムエンジニア（SE）の仕事内容とは？新卒入社後の仕事を具体例をもとにわかりやすく解説

1.システムエンジニアの仕事内容とは

システムエンジニアの仕事は、「上流工程」「下流工程」とシステム開発の全工程に関わる。

それぞれの工程で求められる役割やスキルが異なるため、まずは全体像を把握することが大切になる。

1-1.上流工程はシステムの設計書を作る

上流工程とは、顧客の要望をヒアリングして、システムの設計に落とし込むフェーズを指す。

顧客が抱える課題を正確に理解し、IT技術を使って解決策を提示する力がこの仕事には欠かせない。

システム全体の方向性を決める重要な工程であり、関係者と合意形成を図るためのコミュニケーション能力が必要になる。

顧客のビジネスを深く理解し、最適な仕組みを提案できる点に、上流工程ならではの面白さを感じられる。

1-2.下流工程は開発・テスト・維持を行う

下流工程とは、設計書をもとにシステムを作り上げ、守るフェーズだ。

さらに、完成したシステムにバグがないかを確認し、トラブル発生時に対応していく。ものづくりの楽しさを直接感じられる工程であり、エンジニアとしての基礎体力を養う場となる。

実際に動くシステムを目の当たりにできるため、大きな達成感を得られる。

もしプログラムが動かない場合は、原因を突き止めて修正していく。自分が書いたコードが、世の中で役に立っていることを実感できる瞬間は格別だ。

2.【上流工程】システムエンジニアの仕事の具体例

上流工程は、システム開発の出発点であり、方向性を決める局面だ。

顧客の曖昧な要望を具体的な形にするためには、高度なヒアリング能力と想像力が必要になる。ここでは、上流工程における3つの具体的な仕事内容を紹介する。

2-1.何を実現したいか聞く「要件定義」

要件定義は開発の第一歩は、顧客が実現したいことを明確にすることから始まる。

顧客自身も具体的な解決策を持っておらず、漠然とした悩みを抱えていることが多い。そのため、対話を重ねながら潜在的なニーズを引き出すヒアリング能力が求められる。

ここで認識のズレが生じると、後工程で手戻りが発生するため、慎重に進めるべき工程だ。

顧客の言葉を技術的な仕様に翻訳する、コンサルティングに近い業務となる。だからこそ、ITの知識だけでなく、顧客の業界に関する知識も勉強し続ける姿勢が必要になる。

顧客と信頼関係を築き、本音を引き出すことがプロジェクト成功につながるため、コミュニケーション能力が欠かせない。

2-2.何を作るか決める「基本設計」

基本設計では要件定義の内容をもとに、システムの全体像や画面を決めていく。

ユーザーが実際に操作する画面のデザインや、扱うデータの種類など、外側の仕様を決定する。具体的には、以下のような項目を顧客とすり合わせながら決めていく。

顧客に見せて確認を取りながら進めるため、専門用語を使わずに説明するスキルが必要とされる。

スマホアプリを開発する場合は、指の届きやすい位置にボタンを配置するといった配慮も欠かせない。こうした細かな気配りが、使いやすいシステムを生み出す。

このように、読みやすさや使いやすさを考慮した設計書を作成することが、基本設計では重要となる。

2-3.どう作るかを決める「詳細設計」

詳細設計では基本設計の内容を、プログラマーがコードを書けるレベルまで分解する。

システムの内部処理やデータベースの構造など、ユーザーからは見えない裏側の仕組みを設計していく。

論理的思考力が求められる工程であり、システム開発の「設計図」を完成させる役割を担う。プログラムの品質や保守性を高めるために、効率的な処理手順を考える必要がある。

もし論理的な矛盾があれば、システムは正しく動作しないため、パズルのピースを埋めるような緻密さが求められる。

3.【下流工程】システムエンジニアの仕事の具体例

設計図ができあがったら、いよいよ実際にモノを作るフェーズに入る。

設計したものが形になり、動き出す瞬間を見届けることができる、エンジニアにとって最もエキサイティングな時間だ。ここでは、下流工程における4つの仕事内容を紹介していく。

3-1.設計図をもとに開発を行う「実装」

実装とは、詳細設計書の内容をもとに、プログラミング言語を用いてシステムを実際に構築するフェーズを指す。

この工程では、JavaやPythonなどの言語を駆使し、コンピュータが理解できる命令文を正確に記述していく。

単に機能が動けばよいわけではなく、プロとして以下の品質を意識したコーディングが求められる。

プログラマーが主導する工程だが、システムエンジニアも進捗管理や一部のプログラム作成を担当する。

数千行にも及ぶコードを書き上げ、エラーなくシステムが動いた瞬間の達成感は、この仕事ならではの醍醐味といえる。

3-2.要望や設計通りか確認する「テスト」

テストでは実装されたシステムが、設計通りに動作するかを入念に確認する。

プログラム単体での動作確認から、システム全体を通しての確認まで、段階的に実施される。具体的には、以下のようなテストを行い、品質を徹底的にチェックしていく。

バグが見つかれば修正し、再度テストを行うという作業を繰り返し、品質を高めていく。地道な作業だが、リリース後のトラブルを防ぐための最後の砦となる重要な工程だ。

ユーザーが安心して使える状態にするために、あらゆるケースを想定して検証を行う。

「もしユーザーがこんな操作をしたらどうなるか」という想像力を働かせ、意地悪なテストをすることも時には必要になる。

信頼されるシステムを生み出すため、品質を守るという責任感がテストでは重要だ。

3-3.システム上の問題解決を行う「保守」

保守とは、稼働中のシステムに発生したトラブルを解決したり、機能を改善したりして安定稼働を支える工程を指す。

主な業務は以下のとおりで、顧客が安心してシステムを使い続けられるように日々のメンテナンスを行う。

例えば、消費税率が変わるタイミングに合わせて、システム内の計算式を書き換える対応も保守の役割になる。

トラブルは予期せぬタイミングで起こるため、焦らずに原因を突き止め、迅速に対処する冷静な判断力が欠かせない。

顧客のビジネスを止めないという責任感を持ち、システムを守り抜く点にこの仕事の大きなやりがいを感じられる。

3-4.システムの安定運用を目指す「運用」

運用ではシステムが24時間365日、止まることなく安定して動くように管理する。

サーバーやネットワークの稼働状況をモニタリングし、異常の予兆があれば事前に対処していく。また、データのバックアップを定期的に取得し、万が一のデータ消失に備える。

目立たない存在かもしれないが、社会インフラを支えている重要な役割を担う。

もし銀行のシステムが止まれば社会が大混乱するように、運用の仕事は社会の平穏を守ることに直結している。

4.システムエンジニア採用企業別の仕事内容

就職する企業のタイプによって、担当する業務範囲や働き方は異なる。

自分がどの工程に関わりたいか、どのようなスキルを身につけたいかによって、選ぶべき企業は変わってくる。ここでは、主要な3つの企業形態ごとの特徴を解説していく。

4-1.大企業の子会社SIerは基本設計以上を行う

親会社やグループ会社のシステム開発を請け負うのが、ユーザー系やメーカー系のSIerだ。

そのため、技術力よりもマネジメント能力や折衝能力が重視される。ただ、大規模なプロジェクトを動かす醍醐味がある一方、自分でコードを書く機会は少なくなりがちだ。

安定した環境で、上流工程のスキルを磨きたい人には適した環境といえる。

顧客である親会社と対等な立場で議論し、ビジネスの根幹に関わるシステムを企画・提案できるのが魅力だ。

4-2.独立系SIerは全工程に携わることが多い

親会社を持たず、独自にシステム開発を行うのが独立系SIerだ。様々な業界の顧客と取引があり、要件定義から運用保守まで一貫して請け負うことが多い。

自社内で開発チームを組むため、若手のうちからプログラミング経験を積み、徐々にステップアップしていく。

ただし、案件によっては下流工程のみを担当することもあり、配属されるプロジェクトに左右されてしまう。

ただ、幅広い技術や業務知識が身につくため、市場価値の高いエンジニアを目指せる。実力次第で早期に責任あるポジションを任されることもあり、成長意欲の高い人に向いている。

4-3.SESは詳細設計以下に携わることが多い

エンジニアを顧客企業に派遣し、技術力を提供するのがSES企業だ。

大手SIerが受注した案件の、人手が足りない部分を補う形で参画していく。客先に常駐して働くため、様々な現場を経験し、多様な技術環境に触れることができる。

一方で、上流工程に関わるチャンスは限定的であり、テスターなどの下流工程を任される。

自らスキルを磨き、より高度な案件を任せてもらえるように努力する姿勢が欠かせない。

さらに、現場が変わるたびに新しい人間関係を築く必要があるため、技術力だけでなく適応力やコミュニケーション能力が鍛えられる。

5.新卒システムエンジニアが最初にやる仕事ランキング

新卒でシステムエンジニアになっても、いきなり難しい仕事を任されることはない。

まずは基礎的な業務からスタートし、徐々にステップアップしていく。企業によって異なるが、多くの新卒SEが最初に経験する業務には傾向がある。

ここでは、新卒が最初に担当することが多い仕事をランキング形式で紹介していく。

5-1.【1位】運用・保守

最も多くの新卒のシステムエンジニアが最初に経験するのが、システムの運用・保守業務だ。

すでに稼働しているシステムのマニュアルに沿って作業を行うため、未経験者でも取り組みやすい。エラーログの確認や問い合わせ対応を通じて、システム全体の仕組みを理解できる。

ここでの経験が、将来的にトラブルに強いシステムを設計するための土台となっていく。実際に、ユーザーの生の声に触れることで、使いやすさへの意識も自然と高まる。

マニュアル通りに進めるだけでなく、なぜその作業が必要なのかを考えながら取り組むことで、成長スピードが変わっていく。

5-2.【2位】テスト・実装

運用・保守に次いで多いのが、プログラムのテストや実装の業務だ。

先輩エンジニアが書いたコードのテストを行ったり、詳細設計書をもとに簡単な機能の実装を任されたりする。

この時期は、ものづくりの楽しさと難しさの両方を肌で感じ、技術者としての実力を身につけていきたい。また、バグを見つけて修正する過程で、論理的な思考力も磨かれていく。

自分の書いたコードが初めて動いた時の感動は、エンジニアとしての原体験となり、その後のキャリアを支えるモチベーションになる。

5-3.【3位】詳細設計

一部の優秀な新卒や教育体制の整った企業では、早い段階から詳細設計を任される。

既存システムの改修案件などで、影響範囲が限定的な機能の設計を担当し、設計方法を学ぶ。

先輩が作成した基本設計書を読み解き、それを処理手順に落とし込む作業は、システムに対する深い理解が欠かせない。

そうして、システム開発の全体像が見えてくるようになり、仕事の面白さが格段に増していく。

上流工程を目指す上でも、詳細設計の経験は欠かせない。どうすればプログラマーに伝わりやすい設計書になるかを考えることで、伝える力やドキュメント作成能力も向上していく。

6.新卒システムエンジニアが避けたい仕事の具体例

システムエンジニアとして成長するためには、避けるべき仕事や環境も存在する。

これらを知っておくことで、キャリアの停滞を防ぎ、順調にステップアップできる。実際に、新卒が入社後に避けるべき状況は、以下のとおりだ。

6-1.何年経っても運用・保守が続く

新卒の修行期間として運用・保守を経験するのは良いが、それが数年も続く環境は避けたい。

運用・保守だけでは、新しいシステムを生み出すための「設計力」や「開発力」が身につかないからだ。

そのため、定期的に上司と面談を行い、開発案件への異動希望を出したり、転職を検討していく。もしキャリアの停滞を感じたら、早めに次のステップへ進む準備をしなければならない。

常に新しい技術に触れられる環境に身を置くことが、エンジニアとしての寿命を延ばす。

同じ作業の繰り返しで成長を感じられない場合は、環境を変える勇気を持つことも、自分のキャリアを守るために欠かせない。

6-2.実装を経験せず会議・資料作成だらけ

大手SIerなどでよくあるのが、プログラミングを経験せずに管理業務ばかりを任されるケースだ。

「コードが書けないSE」になってしまうと、技術的な裏付けのない設計しかできず、プログラマーから信頼されない。また、転職市場においても、開発経験のないSEは評価されにくい傾向もある。

そのため、若手のうちは泥臭くても手を動かし、技術の基礎をしっかりと固めることが、将来への投資となる。

自ら手を動かすことで、システムの中身を深く理解し、適切な判断ができるためだ。

将来エンジニアとして活躍したい君は、会議や資料作成ばかりの企業は避けなくてはならない。

6-3.下請けに仕事を振る業務が多い

協力会社への発注や進捗管理だけで、自分自身は技術的な判断に関与しない仕事も避けたい。

単なる伝書鳩のような役割になってしまい、プロジェクトマネジメントのスキルすら身につかない恐れがある。

本来のプロジェクトマネージャーの業務は、技術的な課題を理解し、適切なリソース配分やリスク管理を行う。

そのため、主体的にプロジェクトに関わり、技術的な議論にも参加できる環境を選ぶようにしよう。自分の意見を持ち、プロジェクトをリードする経験こそが成長につながる。

7.システムエンジニアがキャリアのために経験したい仕事

将来的に市場価値の高いエンジニアになるためには、経験しておくべき業務がある。

これらを意識的にキャリアに組み込むことで、成長スピードが加速するだろう。実際に、システムエンジニアが経験すべき仕事は、以下のとおりだ。

7-1.詳細設計・実装は技術者として必須の仕事

どのキャリアパスを目指すにしても、詳細設計と実装の経験は、システムエンジニアとしての土台となる。

自分でコードを書いた経験があるからこそ、実現可能な設計ができるようになり、トラブル時の原因特定も早くなる。

この時期に培った技術的直感は、一生モノの財産となり、どんな現場でも通用する武器になる。技術力があるシステムエンジニアは、顧客やチームメンバーからの信頼も厚くなる。

コードの品質やパフォーマンスを意識して開発した経験は、将来的に大規模なシステムを設計する際に必ず活きるだろう。

7-2.基本設計以上は下流工程を経験してからやる

上流工程を目指す場合でも、まずは下流工程を経験してからステップアップしていきたい。

現場の苦労やシステムの限界を知らずに理想だけで設計してしまうと、実装不可能な仕様を作ってしまう。

現場を知るシステムエンジニアは、プログラマーからも信頼されやすく、チーム全体を円滑に動かすことができる。

現場のリアリティを知っているからこそ、説得力のある設計や提案ができるようになる。

急がば回れで、まずは足元を固めることから始め、着実にキャリアの階段を上っていくことが大切だ。

7-3.運用・保守は3年以上続けないことが大切

運用・保守の経験は、システム全体を知る上で重要だが、長期間留まることはリスクになる。

運用・保守はスキルアップの天井が低く、新しい技術に触れる機会も限られるからだ。

もし社内での異動が難しい場合は、プログラミングスキルを身につけて、テストや実装が行える会社に転職しよう。

自分の市場価値を常に意識し、停滞しないようにキャリアをコントロールする姿勢が求められる。同じ場所に留まることのリスクを理解し、自ら変化を求めて行動していく。

運用で培った「システムを守る視点」は、開発側に回った時にも、トラブルに強いシステムを作るための武器になる。

8.システムエンジニアの就活でよくある質問

システムエンジニアを目指す就活生からよく寄せられる質問をまとめた。

不安や疑問を解消して、自信を持って選考に臨めるようにしよう。正しい知識を持つことで、面接での受け答えにも余裕が生まれるはずだ。よくある質問は以下のとおりだ。

8-1.文系でも携われる仕事ですか？

文系でも全く問題なく携われる仕事であり、実際に多くの文系出身者がシステムエンジニアとして活躍している。

システムエンジニアの仕事において重要な「顧客の要望を聞き出す力」や「チームをまとめる力」は、文系学生が得意とする。

技術的な知識は後からついてくるものなので、まずはコミュニケーション能力や主体性をアピールしよう。

論理的に物事を考え、わかりやすく伝える力があれば、文系理系に関係なく活躍できる。実際に文系出身のプロジェクトマネージャーも多く、現場の中心となってプロジェクトを牽引している。

そのため、「理系じゃないから」と諦める必要はなく、むしろ文系の強みを活かせる職種として自信を持ってほしい。

8-2.この仕事はAIに奪われることはないですか？

AIの進化により単純なコーディングなどは自動化される可能性があるが、システムエンジニアの仕事自体がなくなることはない。

顧客の抽象的な悩みを具体的なシステム要件に落とし込む業務や、人間関係の調整は、AIには代替できないからだ。

AIを使いこなす側のエンジニアになれば、将来的にも安定して活躍し続けられる。人間にしかできないクリエイティブな領域や、高度な判断が求められる領域で価値を発揮できる。

変化を恐れず、新しい技術を味方につけることで、システムエンジニアとしての価値はさらに高まっていく。

8-3.プログラミングをやることはありますか？

企業や配属される部署、職種によって異なるが、システムエンジニアであってもプログラミングを行う機会はある。

特に若手のうちは、技術理解を深めるために開発業務を担当するケースが多い。

また、プログラミングをしない上流工程メインのシステムエンジニアであっても、コードが読める知識は必須となる。

アレルギーを持たずに、まずは触ってみるという前向きな姿勢が大切だ。

プログラミングを知ることで、設計の質が向上し、より良いシステムができる。

自分で書けなくても、どんなコードが書かれているかを理解できるようになることが、システムエンジニアとして成長するためには欠かせない。

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9-1.システムエンジニアの就活成功インタビュー①

9-2.システムエンジニアの就活成功インタビュー②

システムエンジニアは、厳しい一面もあるが、それ以上に達成感と成長を得られる仕事だ。

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